令和二年一月場所八日目観戦記
そ の 四(令和 2年 1月19日)
希善龍封じの右筈、額もつけて腰を割り、まず申し分ない形の北はり磨、ところが一気に押し込むことができないでいるうちに、 左も右も入る形になってしまった。希善龍右足を引いて左を首に巻き、北はり磨が空を掻くうちに希善龍は肩越しどころか頭越しに左上手をむんずと握る。 この上手も北はり磨の左腰側というとんでもない位置。ここから希善龍は引っ張りに引っ張り、黒房から青房、さらに土俵中央東寄りに引き込んで振り捨てる。 希善龍の前では、常識も定石も霞んでしまう。
引かれてつんのめった千代ノ皇が、硬い体をいっぱいに使って青狼の位置を確認しながら向き直ろうとする。青狼押し込んで左上手を取った。 右四つは青狼得意、ここからどうするかと思ったのだが、右四つは千代ノ皇も得意、吊りも得意だった千代ノ皇の方が力が強く、 千代ノ皇が右から掬うと青狼の上手は切れてしまったのだった。
十枚目の土俵入り、千代翔馬の両腕は天まで届けといわんばかり。こんなに真っ直ぐに伸ばす人は他にいたかと思ったら、 矢後もそうだった。
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