令和三年三月場所千秋楽観戦記
そ の 十四(令和 3年 3月28日)
明瀬山の当たりは猛烈だった。額で当たりながら腹の肉をぶつけるような独特の体当たりはいつもの通りだが、大栄翔の両手突きを両腕ではね上げ、 左喉輪で仰け反らせたそのさまは迫力満点、そして得意の右前褌を取りにいくのはまさに明瀬山の十八番だった。 尤も大栄翔もこれで引き下がる人物ではない。左で重い明瀬山を押さえ、反転攻勢の右喉輪突き、突きっ放しの威力で明瀬山を後退させ、猛然と突っ張って突き出した。 予想を大きく超える好勝負、勝ち越しにはつながらなかったが、明瀬山の一発は意外に力を持っていた。
土俵上は 4敗の安と碧山、控えには 3敗の照ノ富士と 4敗の貴景勝が入り、役者が揃う。幕内は、照ノ富士の単独優勝か、巴戦になるかという形、 まずは 4敗勢の生き残りを懸ける一番だが、 4敗「勢」という字に似つかわしいのはどちらか、星取の経過から一目瞭然ではあった…
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