令和三年三月場所千秋楽観戦記
そ の 十六(令和 3年 3月28日)
栃ノ心の塩撒き、目立ってはいないが、高く上がる。
この割も 7勝 7敗同士だった。栃ノ心かち上げから腕で押し放したが、少しの間ができたところで体を開かずまともに引っ張って敗れた。 隆の勝どうにか勝ち越し、ギリギリになるとは思わなかった。
結び前がこの場所の山場、 4敗の大関貴景勝と、 3敗の関脇照ノ富士の一戦。一本差して起こせれば間違いなく照ノ富士のものだろうが、 貴景勝という相手は照ノ富士にとって取りやすくはない。安のように差し手を殺す攻め方をしてくるのとは違う。重みのある波状攻撃で上体を起こしにくるのだ。 膝が十全ではないから腰が崩れてしまうことがある。そうなったのが
11月の決定戦
だった。 ただ、大栄翔と反対で貴景勝の押し放しはどちらかというと右の方が効く。加えて貴景勝は大幅に減量した。そう考えると、照ノ富士の右がなかなか入らないというほどではなさそうだ。 しかし照ノ富士は終盤に入って左膝の調子が悪くなっている。色々な要素が浮かんでくるものの、問題は定量的な計測が難しいということだ。 と考えながら両者を撮るうち、時間前の仕切りは僅かに 3回、先に塩を掴むは照ノ富士、遅れて貴景勝、両者ほぼ同時に塩を撒き、進み出でたる土俵中央、 待ったなしと告げて伊之助、軍配を返す。先に仕切る貴景勝、遅れて腰を割る照ノ富士。立ちが早かったのは貴景勝だった…
(以下次頁)
幕内取組・五
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