平成二十九年一月場所初日観戦記
そ の 十四(平成29年 1月 8日)
千代翔馬は左四つで取りたい人で、右手を下から大きく出して右前褌を取ろうとした。嘉風は左を固めて当たるので相四つということになるが、 まともに組み合いたい人ではない。
千代翔馬は右が取れなかった。左もはね上げられた。ここで左から首を引いた。これを想定していなかったり、反応が遅れたりすると、嘉風は両手からベタッと落ちてしまうのだが、 このときはスッとついていって右を覗かせた。千代翔馬は焦った。左に逃げて右に払おうとした。しかし嘉風は動ずるところなく、右で千代翔馬を動かさず左をサッと伸ばして後ろ縦褌を取った。 千代翔馬が体を廻すより速く千代翔馬の右についた。千代翔馬さらに左前に逃げようとした。すると腰を割っていた嘉風は立ち上がった。 千代翔馬なおも走ろうとしたが足は空を掻くばかり。嘉風左から引き上げた。千代翔馬は右腕を嘉風の右肩に乗せていたので空中で水平にさせられ、 次の瞬間には眼前に土俵が迫ってきた。足が頭より上にいってはどうしようもない。千代翔馬左手から東に落とされた。
館内大いに沸き返る中、嘉風はいつものように表情を変えず勝ち名乗りを受け、柝の音を左耳で聞きながら土俵を降り、淡々と引き揚げていった。
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