令和二年九月場所千秋楽観戦記
そ の 十四(令和 2年 9月27日)
先にさっさと動く翔猿、足の位置を決めた頃、正代ようよう腰を上げる。翔猿早々に腰を割り、正代を見上げる。正代、時間をかけて足を置き、 じっくりと腰を割る。翔猿右手を着き、眦を決して獲物を狙い、左手も着いて待つ。正代、左右を同時におろす、と見る間に翔猿、先んじて両手で突きながら額で当たった。
正代、相手が相手だけに猛然とは踏み込まず、そして下から左を差そうとしたが、これが大きく空を切ったから大変だ。翔猿まずは右を差し勝つ。 正代右も使えていないのに左を巻き替えようとする。翔猿願ったり叶ったり、青房に攻め入って突き上げる。正代、一応膝は曲がっているが、立ち腰である。 左で宛がってまずは凌ぎ、翔猿が右肩から当たって両筈で押すのを今度は右でおっつけて堪える。翔猿ややまともに引くと、正代追って出て左で喉を突こうとする。 翔猿右から宛がって去なし、右おっつけ左喉輪で正代の左側から攻め、正代が正対しようとしながら右から入ろうとすると翔猿スパッと二本差した。 ますます窮したかに見える正代だったが、立ち腰ではあっても膝は伸び切っていない。翔猿が下手を探る右を左から抱え、右からおっつけて翔猿を喰い止め、 右足を俵に掛けて体を廻し、右突き落としで捻じりにいく。翔猿右足を止められて、眼前に迫る蛇の目の砂、遂にその砂を右肩に着け、狙った大魚は正代の手に帰した。
(以下次頁)
幕内取組・五
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